ダイバーシティ&インクルージョン:職場風土に不可欠かつ変化をもたらす理由

「差別との戦い」は、現代の社会活動の中心課題です。このことからもわかるように、ダイバーシティとインクルージョンは、人事管理部門、CSR部門における大きなテーマとなっています。ただし、「パフォーマンスの管理に支障が出るから」、「最新の経営トレンドから逸脱したくないから」という理由だけで、インクルージョンの方針を追求するべきではありません。ダイバーシティとインクルージョンはビジネスパフォーマンスの根幹を支えるものであり、倫理とは別の経済的観点からも、これらを促進すべき理由があることにお気づきでない方も多いかもしれません。実際に、職場における多様性とインクルージョンは、イノベーションを促進し、創造力や生産性を高めます。
ダイバーシティとインクルージョンとは何でしょうか?
ダイバーシティの定義
ダイバーシティとは、2010年平等法(イギリス)(Equality. Act 2010)に記載され、保護されている、年齢、性別、人種、文化的ダイバーシティ、宗教、性自認、性的指向、身体障害といった様々な特性を持つ従業員が社内にいる状態のことです。職場のダイバーシティは、例えば、性的指向や宗教、特定の障がいなど、その特性により目に見えない場合もあります。このダイバーシティに富んだ人々が1つの集合体を形成して、「企業体」になるのです。目に見えるダイバーシティには、文化、人種/民族、国籍、性別、年齢、精神または身体的状態(後者は「障がい」とも言います)などがあります。目に見えないダイバーシティには、教育、家庭状況、価値観/信条、仕事に対するスタンス、社会経済的状況といった思考や考え方、人生経験などがあります。性的指向や宗教、言語、兵役経験などのダイバーシティは、見える場合も、見えない場合もあります。
ダイバーシティの定義
ダイバーシティとは、人をグループ、この場合は「企業」に取り入れることを「決定」することです。インクルーシブな組織では、どの従業員も職場に帰属意識を持ち、心地良く感じることができます。そのような職場環境を実現するためには、仕事に対する高いレベルでのチームの結束力、主体性、責任感と、仕事の適正な評価が不可欠です。つまり、ダイバーシティとは、排他、分離、差別とは真逆の考え方のことです。
ダイバーシティとインクルージョンの違い
端的に言えば、ダイバーシティは「事実」、インクルージョンは「選択」です。ダイバーシティとは、様々な特性を持った人々の中に身を置くことです。インクルージョンは、特性の違いを指摘することなく、様々な人々と一緒に仕事をすることです。これにより、すべての従業員が同じように扱われるようになります。アメリカの活動家のVernā Myersは次のように述べています:「ダイバーシティとは、パーティーに招待されるようなもの。インクルージョンは、ダンスに誘われること。」残念なことに、組織はインクルーシブでなくても高いレベルのダイバーシティを実現できてしまいます。しかし、そこには必ず緊張や対立が生まれます。一例をあげましょう。土木工学コースを受講していて、身長が機械に対して低すぎたために女性が一人だけ機会を使えなかったとします。「インクルージョン」は「平等性」と密接に関連しています。しかし、従業員を平等に扱うということは、必ずしも「全く同様に扱う」という意味ではありません。この場合、この女性のために踏み台を準備するなど、臨機応変に対応することも必要なのです。このような問題が起きないようにするために、企業の人事ポリシーと人材管理戦略を整えておきましょう。そしてインクルージョンは「マネジメント」の問題ですが、ダイバーシティは、どちらかと言うと、「雇用」に関する問題です。インクルージョンが伴わないダイバーシティは不十分なのです。ダイバーシティとインクルージョンは同義語ではなく、相互依存関係だと説明しました。前述したように、組織はインクルーシブでなくてもダイバーシティを実現できます。「様々なバックグラウンドを持つ人々が職場にいる」という状態は、インクルーシブというコンセプトの一面に過ぎません。経営者の中には、これを理解していない人もいます。「受け入れる」「尊重する」という意識がなければ、ダイバーシティとインクルージョンを実現している企業とは言えません。様々なバックグラウンドを持つ人材を魅了するためには、イノベーションを醸成し、参加型文化を促進してビジネスの成長を推進するシステムが必要です。
職場のダイバーシティとインクルージョンがもたらすメリット
ダイバーシティとインクルージョンは、単なる人事のトレンドではありません。言うまでもありませんが、差別は法律で禁じられています。採用時に差別した企業(法人)は、何百、何千ポンドという罰金が課され、営業停止処分を受ける可能性があります。雇用主には最大45,000ユーロの罰金と3年間の懲役刑が課される場合もあります。法的枠組みを超えるダイバーシティとインクルージョンの方針は、企業の経済パフォーマンスを飛躍させます。調査会社マッキンゼーの世界的な調査によると、民族のダイバーシティを実現している企業の上位4分の1は、国内産業の中央値を上回る経済パフォーマンスを達成する可能性が35%も高くなります。職場のダイバーシティを促進することは、スキルと知識のみに基づいて人材を選考するということです。つまり、市場で最も優秀な人材を選ぶ、ということです。加えて、インクルージョンの方針は、結束力とチーム精神を高めます。「仲間に入れてもらえた」「大切にされている」と感じる従業員は、忠誠心が強くなる傾向にあります。結果として離職率が下がり、雇用や求人にかかるコストの削減につながるのです。忠誠心の基準となるインクルージョン戦略は、人材の魅力と、定着率も高めるため、フルーガルイノベーション(倹約型革新)の原理にも適ってます。国際労働機関によると、強力なインクルージョンの方針を掲げている企業は、収益、評判が向上し、新しい人材を魅了する可能性が60%も高くなります。このようにポジティブな方法で、御社のブランド知名度を上げたいと思いませんか?
職場のダイバーシティとインクルージョンを確立する方法は?
スキルと職業で雇用する
前述したように、企業文化として良好なダイバーシティを素早く実現する方法は「採用」です。採用者は、宗教や性別、年齢といった、いわゆる差別的な特性ではなく、スキルと職業を選考基準にしなければなりません。スキルを選考基準にする場合の3つの審査項目:
- 知識:学業やトレーニングにより培ったスキルと理論的知識(ハードスキル)
- ノウハウ:理論的知識を実践すること
- 対人能力:主体性、順応性、創造力、感情的知性といった一連のスキルと人間性(ソフトスキル)
職業を選考基準にするということは、資格と職歴を見るということです。この2つの選考方法が矛盾することはありません。相互に雇用の公正性と平等性を補完し、積極的差別を防ぎ、採用時のダイバーシティを促進します。
職場に対する評価
障壁やアクセシビリティの欠如が、障害者の就労を妨げるという特定の意図を持ってなされていると主張する人はほとんどいないでしょう。しかし、意図せず作られてしまった可能性のある障壁を確認し、人事ポリシーや手順(例:これまで通りのやり方を続ける)を特定することは障がい者の助けになります。アクセシビリティ監査や関係者全員を対象とした調査を実施し、ポリシーと手順の改善方法を探りましょう。職場におけるアクセシビリティの評価と問題解決に取り組む際は、職場環境や採用プロセス(例:求人広告、面接用書類の選定、新人研修)を含む、仕事上のあらゆる側面を考慮する必要があります。
すべての従業員への平等な扱い
ビジネスにおけるインクルージョンの要は「公正性」です。つまり、給料や労働条件、仕事量、休暇、特定のサービスへのアクセスなど、すべての従業員が同じ立場で扱われなければなりません。例えば、女性リーダーの育成を通じて男女平等を実現するなどです。経営スタイルにおけるえこひいきは許されません。差別対象になっている従業員がいる場合は、より厳格に管理する必要があります。
チームワーク
社内のダイバーシティマネジメントの目的は、真の仲間意識とチームの結束力を高めて従業員を1つにすることです。仲間外れの対策には、「相互扶助」の促進が最も有効です。具体的には、ブレインストーミングセッションやリラックスした時間に定期交流会を設けるのも良い方法でしょう。チームビルディングワークショップもチーム精神の強化に欠かせません。目隠しツアーや宝探し、脱出ゲーム、殺人ミステリーなど、様々なテーマのイベントを開催しましょう。従業員同士の信頼を築き、チームワークと集団的なパフォーマンスを高めるグループ向けアクティビティの一覧です。体力を消耗することなく楽しめます。終業後の交流(金曜夜の飲み会や食事会など)も定番で、職場の外で絆を深めることができます。チーム間のコラボレーションについては、コラボレーションツールやコラボレーションビジネスネットワーク(CSR)が大きく貢献します。これらのツールは情報共有を促進し、集合知(集団的知性)を活性化させます。また、メディアで報道された多くの AI スキャンダルに見られるように、テクノロジーはこの側面において考慮をするわけではないので、社内のデジタル文化についても考慮する必要があります。
ダイバーシティとインクルージョンに対する従業員の意識を高める方法
職場におけるインクルージョンは、マネジメントと人事部門だけが取り組むものではありません。すべての従業員が、会社の価値観を共有する必要があります。これを実現するためには、ワークショップやトレーニングを通して企業文化を浸透させることが重要です。このようなダイバーシティに対する意識は、ダイバーシティをテーマにしたニュースレターや、楽しく学べるセミナー、地域団体との交流を通じて芽生えます。リーダーや中間マネージャーも、コミュニケーションと異文化マネジメント、ニューロマネジメント、マトリックスマネジメント、インクルーシブマネジメントを題材にしたセミナーやカンファレンスを通して学ぶことができます。目標は、ステレオタイプの打破と不平等の指摘です。様々な取り組みについて述べてきましたが、最良の方法は、社内にダイバーシティマネージャーを採用することです。そして従業員にダイバーシティとインクルージョンに関する問題を認識させ、社会的な差別に直面した際には、立ち向かう役割を担うことになります。
有意義なコンフリクトマネジメントポリシー
従業員間の対立は、職場、特にダイバーシティに富んだ職場に起こりがちな危機的状況です。しかし、対立への対応が不十分な場合は、何年にもわたって築いてきたものを台無しにする可能性があります。従って、効果的かつ持続的な仲介システムを設ける必要があります。まず、彼らに企業の価値観を伝え、すべての従業員が大切にしている共通の価値観を尊重するよう指導します。次に、必ず俊敏なプロジェクトマネジメントアプローチを採用し、問題が発生した時には話し合うようにします。それでも対立が生じる場合は、コミュニケーションに力を入れましょう。効果的なコミュニケーションは、積極的かつ寄り添うように「聞く」ことから始まります。そして徐々に共通点を探るのです。ウィンウィンの解決策を見出すことですが理想的ですが、時には妥協が必要な場合もあります。
ダイバーシティとインクルージョンを支援する新しいコンセプト
人間中心設計(HCD)とは、「人」に焦点を当てた革新的な問題解決方法です。エンドユーザーに焦点を当てているこのメソッドは、社内全体のシステム上の障害を減らしながらインクルージョンとエンゲージメントを高める、というポジティブな結果と成果を目指しています。本来、「ユニバーサルデザイン」は、建物や公共施設といった建築物のアクセシビリティを表現する用語でした。現在では、誰もがすぐに難なくフル活用できる(例:人のダイバーシティや公正性、インクルージョンを考慮したデザイン)製品や環境、システム作りを目指す、という意味で使われています。教育分野に広く普及している「成長志向」とは、常に能力を伸ばそうとする姿勢、思考のことです。「学習」は継続的なプロセスであり、その過程で継続的な「軌道修正」が行われます。人材採用時の選考過程に成長志向の概念を取り入れることで、ダイバーシティとインクルージョンの向上を図ることができます。例えば、成長の可能性は将来的に企業の利益となり得る「未発掘の宝」という考え方で採用候補の枠を広げる、などがあります。
ダイバーシティとインクルージョンを支援するコーチング
マネージャーは企業のインクルージョンの方針で重要な役割を担っており、無見識で配慮のないマネージャーが存在する場合は、従業員の離職率が跳ね上がる可能性があります。たとえリモートでのマネジメントだとしても、マネージャーは模範的に振舞わなければなりません。それなりの理由から、ダイバーシティとインクルージョンの価値観はまず上司から伝えられるのです。マネージャーの積極的なリーダーシップで、試す権利、ミスする権利、弱さを持つ権利が認められた安心できる職場環境を整えます。こうすることで、チームメンバーに自信を持たせることができるのです。ダイバーシティマネジメントを確立するためには、マネージャーへのコーチングが不可欠なのです。コーチングはマネジメントを革新します。従業員については、プロのコーチングにより、自信やレジリエンスを身に付けるなど、必要なソフトスキルを開発します。言うまでもありませんが、自由な企業を目指している場合でも、イノベーションマネジメント重視の企業でも、企業の価値観を伝える最良の方法はコーチングです。マネージャーもリーダーも、ミーティングやブレインストーミングセッションで新しい視点やアイデアを受け入れる姿勢を示し、あらゆるレベル、あらゆるバックグラウンドを持つ従業員の発言を促すようにします。全員が平等に扱われるようになるだけでなく、集団思考の落とし穴やアイデアの見逃しも減少します。その結果、様々な取り組みで結果を出しながら、誰もが自分の可能性を表現できる職場環境を実現し、インクルーシブなリーダーシップを時間をかけて実現することができるのです。企業が職場の機会均等の向上を目指して努力することを、多くの人がを期待しています。これらのテーマに沿ったデジタルコーチングプログラムは、Eラーニングよりパーソナライズされたインタラクティブなトレーニングを提供し、グローバルレベルの企業展開(買収、合併、地理的拡大)とローカルレベルの企業文化を両立させます。今日では、「どうやるか」を考えるのではなく、「人材の豊かさ」を武器に具体的に行動し、、物事を正しい方向へ導き、真の競争優位性を実現することが重要なのです。
FAQ
人材育成を企業目標に組み込むには、戦略的アプローチが必要です。これには、明確で定量化可能な企業目標を設定し、KPIを作成し、従業員の能力開発目標を組織目標と一致させることが必要です。
そして、従業員と企業の両方の目標を達成するための、個別の能力開発計画を作成します。能力開発プログラムを調整し、その成功を確実にするためには、進捗とKPIの定期的なモニタリングが必要です。計画的かつ意図的に従業員の能力開発を組織目標に組み込むことで、従業員は組織の成功に貢献するために必要なスキルと知識を身につけることができるようになります。
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